演奏会の音をきれいに残したいとき、録音をどう頼めばよいか迷う方は多いはずです。結論から言うと、演奏会の録音の出来は「マイクをどこに置くか」と「録った後にどう仕上げるか」でほとんど決まります。
ホールには天井から吊るすマイクの設備があることも多く、自分の機材で録る方もいます。それでも仕上がりに差が出るのは、この2つの工夫に技術と経験が必要だからです。この記事では、演奏会の撮影と録音を手がける収録の現場の視点から、プロが実際にやっている録り方の考え方と、ハイレゾで残す意味をやさしく解説します。
この記事の要点
- 演奏会の録音の出来は、マイクの置き場所と、録った後の仕上げ(整音と呼ばれます)でほとんど決まる。
- マイクは演奏者に近い高い位置に置くのが基本。客席の後ろで録ると、響きを拾いすぎて音の輪郭がぼやける。
- たくさんのマイクを立てるほど良くなるわけではない。音が届く時間のずれで、混ぜると音が濁るため、プロは全体を1組のマイクで押さえ、足りない楽器だけそっと補う。
- ハイレゾは、クラシックの小さな音から大きな音までの幅広さと、繊細な余韻を取りこぼさないための「大きな器」と考えるとわかりやすい。
なぜ演奏会の録音はプロに任せた方がよいのか
演奏会の録音をプロに任せた方がよいのは、同じ演奏でも、マイクの置き方と録った後の仕上げで、音がまるで別物になるからです。そして本番は一度きりで、録り直しがききません。
ホールには、天井からマイクを吊るす設備(三点吊りと呼ばれます)が備わっていることがあります。これがあれば誰でも良い音で録れる、と思われがちですが、実際はそうではありません。
録音はホールの音響担当者の本来の仕事ではなく、マイクの選び方や置く位置までは面倒を見てもらえないのが普通です。設備があることと、それを使いこなすことは別の話です。
自分のスマートフォンやICレコーダー(持ち運べる録音機)で録る方法もあります。手軽ではありますが、演奏会には独特の難しさがあるのです。
会場は暗く、音は小さな弱音から大きな強音まで幅が広く、曲は数十分続くこともあります。こうした条件では、思った通りに音を残すのが難しい場面が多くなります。
しかも、録音は失敗してもやり直せません。演奏が終わってから「音が割れていた」「響きすぎて細部が聞こえない」と気づいても、もう取り返しがつかないのです。だからこそ、一度きりの本番を確実に残すために、録音の専門の技術を持つ業者に任せる価値があります。
録音は「マイクをどこに置くか」で決まる
演奏会の録音でいちばん大切なのは、マイクをどこに置くかです。マイクの位置が、音の良し悪しの大半を決めると言ってもよいほどです。
ここで大切になるのが、楽器とマイクの距離の考え方です。マイクが楽器に近いほど、演奏そのものの音(直接の音)がはっきり録れます。逆に遠いほど、ホール全体に広がった響きの割合が増えていきます。
そして、この直接の音と響きがちょうど同じ大きさになる距離(臨界距離と呼ばれます)を境に、音の印象は大きく変わります。
焚き火を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。近づけば火の熱さ(直接の音)をはっきり感じ、離れれば周りの空気の暖かさ(ホールの響き)に包まれます。録音の技術者は、その演奏とそのホールにちょうどよい「立ち位置」を探しています。
よくある失敗が、客席の後ろや真ん中で録ることです。この位置だと響きを拾いすぎて、音の輪郭がぼやけます。演奏のはっきりした出だしや、歌詞の子音が聞き取りにくくなり、観客の咳やプログラムをめくる音も入りやすくなります。
そのためプロは、演奏者に近い、少し高い位置にマイクを置くのが基本です。高さを取ると、床からの反射を避けながら、舞台全体を見渡すように録れます。オーケストラなら指揮者の後ろあたりの高い位置が、ひとつの目安になります。
全体を1組で録る「ワンポイント録音」と三点吊り
演奏会の録音の土台になるのが、少ない本数のマイクで全体をまとめて録る方法です。1組のマイクで会場全体の音を捉えるこのやり方は、ワンポイント録音と呼ばれます。
この方法でよく使われるのが、先に触れた三点吊りの設備です。ホールの天井の中央と左右の3か所からマイクを吊り下げ、舞台と客席を見下ろすように録ります。床にスタンドを立てないので客席の視界をさえぎらず、客席で聴いているような自然な音に近づけられるのが利点です。
このときに選ぶのは、演奏そのものの音だけでなく、ホールに広がる豊かな響きまで含めて録れるマイクです。全方向の音を等しく拾うタイプ(無指向性と呼ばれます)がよく使われますが、ホールや狙う音によっては、向きを絞ったマイクを選ぶこともあります。
ホールの響きがよく、編成の音のバランスが整っていれば、この1組のマイクだけで十分に美しい録音が完成します。実際、私たちの収録の現場でも、最終的な音の大半は、この全体を録るマイクで決まります。
ただし、三点吊りがあれば自動的に良い音になるわけではありません。吊るす位置はホールの設計で決まっているため、録りたい音にいちばんよい位置と一致しないこともあります。
どの高さで、どんなマイクを使い、響きをどこまで含めるか。その判断が、仕上がりを大きく左右します。
たくさんのマイクを使う録り方はなぜ難しいのか
全体を録るマイクだけでは、埋もれてしまう楽器が出ることがあります。そこで特定の楽器の近くにもマイクを足すのが、たくさんのマイクを使う録り方(マルチマイク録音と呼ばれます)です。ただし、この方法は本数を増やすほど良くなるわけではなく、むしろ難しさが増します。
難しさの正体は、音が届く時間のずれです。音は空気の中を進むため、同じ演奏でも、近いマイクには早く、遠いマイクには遅れて届きます。
たとえば前列のヴァイオリンの音は前のマイクに先に入り、後ろの打楽器の音は別のマイクに遅れて入ります。この時間のずれたままの音を単純に混ぜると、音同士が打ち消し合い、こもったり濁ったりした音になってしまいます。
そのためプロは、マイクをむやみに増やしません。考え方は「主役はあくまで全体を録る1組のマイク、足りない楽器だけをそっと補う」というものです。補助のマイクは隠し味であって、上げすぎると、その楽器だけが不自然に大きく前に出て、演奏全体のまとまりが崩れます。
さらに、足したマイクの音は、時間のずれを整えてから慎重に混ぜます。どの楽器をどれだけ補うか、時間のずれをどう合わせるか。こうした判断の積み重ねが、たくさんのマイクを濁らせずにまとめる技術です。
録音を業者に頼む価値は、まさにこの判断を任せられる点にあります。

編成によって録り方は変わる
演奏会の録音は、編成によって録り方の勘所が変わります。オーケストラと合唱とピアノの独奏では、気をつけるところがそれぞれ違うからです。録音に慣れた業者は、編成に合わせて録り方を変えます。
| 編成 | 録音の勘所 |
|---|---|
| オーケストラ | 全体をまとめる1組のマイクが音の大半を決める。指揮者の後ろの高い位置を基本に、埋もれやすい楽器だけ補助のマイクで足す。 |
| 吹奏楽 | 金管や打楽器の音が強く、木管が埋もれやすい。強い音でも割れないようにしつつ、埋もれる楽器の補い方がカギになる。 |
| 合唱 | 歌詞の聞き取りやすさと、響きの豊かさの両立が課題。響きすぎるホールでは、少し演奏者に近づけて録ると言葉がはっきりする。 |
| ピアノ独奏・室内楽 | 楽器との距離と、自然な響きのバランスがすべて。少ない本数のマイクで、ていねいに録る。 |
合唱の録音は、声という幅の広い楽器の集まりが相手です。だからこそ、ホールの特徴に合わせた調整が仕上がりを左右します。同じ合唱でも、響きの長いホールと短いホールでは、マイクの距離を変える必要があります。
編成ごとの料金やサービスは、それぞれのページにまとめています(オーケストラ・吹奏楽・合唱・ソロ/小編成)。ご自分の編成に近いページで、録音を含めた収録の内容を確かめられます。
なお、学校の音楽会や合唱コンクールのように、学校全体で行う行事の撮影・録音は、学校向けのスクールメモリーが専門に承っています。
編成が決まったら、録音を含めた見積もりへ
録ったあとの「整音」で仕上がりが変わる
演奏会の録音は、録って終わりではありません。録った音を整える作業(整音と呼ばれます)で、仕上がりはさらに変わります。むしろ、ここに手をかけるかどうかが、業者ごとの差として表れます。
整音でやることは、大きく分けて3つあります。1つ目は、雑音を取り除くことです。咳やプログラムをめくる音、椅子のきしみ、空調の低い音などを、演奏の響きを損なわない範囲でていねいに減らします。
2つ目は、よい演奏を選んでつなぐことです。本番に加えて、本番前の通し練習(ゲネプロと呼ばれます)など複数の機会で録っておき、いちばんよい部分を選んで一つの演奏に仕立てます。このとき、つなぎ目が聞いている人にわからないよう、音の余韻が途切れない位置でそっと縫い合わせます。
3つ目は、音量のバランスを整えることです。小さすぎて埋もれた部分を持ち上げ、大きすぎる部分を抑えて、曲全体を通して聴きやすくします。
大切なのは、整音は派手な加工ではないということです。演奏会の録音で目指すのは、録れた演奏とホールの響きを、できるだけ手を加えずに、いちばんよく聞こえる形で差し出すことです。
音を作り変えるのではなく、演奏のよさを邪魔せずに引き出す。これが、クラシックの録音における整音の考え方です。
ハイレゾで残すとはどういうことか
ハイレゾとは、CDよりも細かく、余裕を持って音を記録する方式のことです(高い解像度の音源、という意味でハイレゾと呼ばれます)。演奏会の録音をハイレゾで残すと、クラシックの繊細な響きや余韻を、より取りこぼしにくくなります。
ハイレゾがCDと違う点は、大きく2つあります。ひとつは、より高い音まで記録できること。もうひとつは、音の小さい・大きいを、より細かい段階で刻めることです。
クラシックでとくに効いてくるのは、2つ目の「音の大小を細かく刻める」点です。クラシックは、ささやくような弱音から、ホールを揺らすような強音まで、音の大小の幅がとても広い音楽だからです。さらに、弓が弦をこする音や、音が消えていく余韻といった、ごく小さな情報にこそ味わいがあります。
刻める段階が細かいほど、こうした繊細な音を雑音に埋もれさせずに残せます。クラシックにハイレゾが向くと言われるのは、このためです。
数字で見ると、その差は大きく開きます。音の大小の段階は、CDが約6万5千段階なのに対し、ハイレゾは約1677万段階。音を測る細かさも、CDが1秒あたり約4万4100回、ハイレゾは約9万6千回です。
ハイレゾの違いは、「大きな器」にたとえるとわかりやすいかもしれません。器が小さいと、弱音の繊細な余韻が縁からこぼれてしまいます。器が大きければ、小さな音から大きな音までを、余裕を持って受け止められます。
録音や編集の段階でも、この余裕があるおかげで、音を整える作業をていねいに重ねられます。

ひとつ正直にお伝えすると、ハイレゾとCDの違いを、誰もがはっきり聴き分けられるわけではありません。聴く環境や機器によっても変わります。
それでも、録音と仕上げの段階で余裕が生まれることは確かで、大切な演奏会を高い品質で残しておく価値は大きいと考えています。一度きりの演奏会を、できるだけ良い状態で後世に残す。これが、ハイレゾで録る意味です。
プロに任せると何が違うのか
演奏会の録音をプロに任せると、自分で録る場合と何が違うのでしょうか。違いは、大きく4つにまとめられます。
1つ目は、マイクと機材の違いです。プロが使う録音用のマイクは、小さな音から大きな音までを正確に、雑音少なく捉えられるように作られています。
一方、スマートフォンやICレコーダーは、もともと会話の録音を想定した機器です。そのため音量を自動で上げ下げする働きが効いてしまい、演奏の自然な強弱が崩れがちです。
2つ目は、置き方とホールの響きの活かし方です。先に述べた通り、マイクの位置と高さ、ホールの響きとの距離の取り方には、知識と経験が要ります。自分で録る場合は、客席の決まった場所からしか録れないことが多く、響きを拾いすぎてぼやけた音になりがちです。
3つ目は、音割れを防ぐ備えです。大きすぎる音が入ると、音が潰れて割れてしまい、これは後から直せません。プロは音量にあらかじめ余裕を持たせ、本番中もヘッドホンで音を聞き続け、割れの兆しが出ないよう見張っています。
4つ目は、録った後の整音と仕上げです。雑音を取り、よい演奏を選んでつなぎ、CDで残す場合は演奏会のCD制作、映像を残す場合は演奏会のDVD・Blu-ray制作の流れで仕上げていきます。この工程があるかないかで、最終的な仕上がりは大きく変わります。
もちろん、きちんとした録音機とマイクを用意し、置き場所を工夫すれば、ご自分でもある程度の録音はできます。分かれ目になるのは、その先の作業です。
複数の機会の録音からよい部分を選んでつなぐ、雑音をていねいに取り除く、本番中に音割れの兆しを見張る。こうした仕上げと当日の備えは、経験と専門の道具がないと難しいものです。
スマートフォンでの録音も、その場の思い出を残すには役立ちます。ただ、コンクールの提出や音大の受験、演奏家の活動の記録など、演奏の実力を第三者にきちんと伝えたい場面では、録音の質がそのまま印象を左右します。大切な一度きりの演奏会だからこそ、録音の専門の技術を持つ業者に任せる意味があります。
よくある質問(FAQ)
演奏会の録音は、ホールにある三点吊りのマイクで録れば十分ではないですか。
三点吊りは便利な設備ですが、それだけで良い音になるとは限りません。吊るす位置はホールの設計で決まっていて、録りたい音にいちばんよい位置と一致しないこともあります。 どんなマイクを選び、どの高さで、響きをどこまで含めて録るか。その判断によって仕上がりは大きく変わります。 録音はホールの音響担当者の本来の仕事ではないため、マイクの選定や位置決めは録音の専門業者に任せる方が安心です。
スマートフォンやICレコーダーで録るのと、プロに頼むのとでは何が違いますか。
大きく4つ違います。マイクと機材の質、マイクの置き方とホールの響きの活かし方、大きな音で割れない備え、そして録った後の整音です。 スマートフォンは会話の録音を想定して作られているため、音量を自動で上げ下げする働きが演奏の強弱を崩しがちです。その場の記録には役立ちますが、演奏の実力を伝えたい場面ではプロの録音が向いています。
ハイレゾで録ると、CDより必ず良い音になりますか。
ハイレゾは、CDより細かく、余裕を持って音を記録できます。ただし、その違いを誰もがはっきり聴き分けられるわけではなく、聴く環境や機器にもよります。 それでも、録音や編集の段階で余裕が生まれ、繊細な余韻を取りこぼしにくくなるのは確かです。大切な演奏会を高い品質で残したい場合に向いています。
録音と撮影は、まとめてお願いできますか。
はい、まとめて承れます。パブットは演奏会の撮影と録音を一つの窓口でお引き受けしており、映像と音の両方を整った形で残せます。 撮影と録音を別々の業者に頼むより、当日の段取りもまとまり、仕上がりの相性もよくなります。費用の目安は1分でわかる自動見積もりで確認できます。
演奏会の録音は、だいたいどれくらいの料金がかかりますか。
録音の料金は、編成や規模、撮影とセットにするかどうかによって変わるため、一概には言えません。おおよその幅としては、十数万円から数十万円ほどが目安です。パブットでは、想定するご依頼内容を選ぶだけで概算がわかる1分の自動見積もりをご用意しているので、条件ごとの費用をその場で確かめられます。
合唱の録音と、オーケストラの録音では録り方が違いますか。
違います。合唱は歌詞の聞き取りやすさと響きの両立が課題で、響きの長いホールでは少し演奏者に近づけて録ります。 オーケストラは全体をまとめる1組のマイクが音の大半を決め、埋もれる楽器を補助のマイクで足します。録音に慣れた業者は、編成とホールの特徴に合わせて録り方を変えます。
録った音は、後からCDや配信用に仕上げてもらえますか。
はい、承れます。録った音は、雑音を取り、よい演奏を選んでつなぎ、音量を整えたうえで、CDや配信に適した形に仕上げます。 パブットでは、録音から仕上げまでを一貫して社内で対応しています。仕上げの希望があれば、ご相談の段階でお知らせください。
まとめ
演奏会の録音の出来は、マイクをどこに置くかと、録った後にどう仕上げるかで、ほとんど決まります。マイクは演奏者に近い高い位置に置くのが基本で、本数は多ければよいわけではありません。
全体を1組のマイクで美しく押さえ、足りない楽器だけをそっと補う。そして録った後は、演奏のよさを邪魔せずに引き出すように整える。これが、プロの録音の考え方です。
本番は一度きりで、録り直しができません。だからこそ、録音の専門の技術を持つ業者に任せることが、大切な演奏会をいちばんよい形で残す近道になります。
パブットは演奏会・コンサートの収録を専門に、年間200件以上のご依頼をお受けしてきました。音の収録から、雑音を整えCDや配信用に仕上げる作業まで、すべて社内で一貫して担当しています。撮影・録音・写真を一つの窓口でまとめて承れるのも強みです。
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