演奏会やコンサートを、会場に来られない人にも届けたい。そう考えてライブ配信を検討する主催者が増えています。結論から言うと、関係者に無料で届けるならYouTubeの限定公開、チケットを売って有料で届けるなら専用の配信サービスを使うのが基本です。
この記事では、演奏会のライブ配信のやり方を、配信の種類から、無料と有料の違い、必要な機材や会場での注意点まで、主催者の目線で順番に説明します。読み終えるころには、自分の演奏会をどう配信すればよいかの見当がつきます。
パブットは演奏会・コンサートの収録を専門にしてきた制作会社です。撮影と録音の現場経験をもとに、配信を考えるときに役立つことをまとめました。
この記事の要点
- 配信には3つの形があります。当日リアルタイムの「生配信」、終演後しばらく見られる「見逃し配信」、編集して後日見てもらう「オンデマンド配信」です。
- 関係者に無料で届けるならYouTubeの限定公開、チケットを売って有料で届けるなら専用の配信サービス(ZAIKO・Streaming+など)を使います。
- 配信には、安定した上り(アップロード)のインターネット回線が必要です。無線より有線が安心で、会場のWi-Fiは使えないことも多いため、事前の確認が欠かせません。
- 演奏会は「音」が命です。映像だけでなく、演奏の音をきれいに届けることが、配信の満足度を大きく左右します。
1. 演奏会のライブ配信とは
演奏会のライブ配信とは、演奏会の映像と音を、インターネットを通じて遠くの人にも届けるしくみのことです。会場の客席だけでなく、家庭のスマートフォンやパソコンからも演奏を楽しんでもらえます。
配信が広がっている理由は、いくつかあります。遠方や海外で会場に来られない家族・知人に届けられること、客席の数に関係なく多くの人に見てもらえること、そして録画を残せば繰り返し見てもらえることです。会場での開催とあわせて配信を行えば、より多くの人に演奏を届けられます。配信ではなく形のあるディスクで配りたい場合は、演奏会のDVD・Blu-ray制作で選び方を解説しています。
なお、コンクールの配信は、提出する映像の規定など特有の事情があります。コンクールの配信情報については音楽コンクールガイド(musiccontestsite.com)も参考にしてください。この記事は、一般の演奏会のほか、吹奏楽部や合唱部などの部活動の定期演奏会、ピアノ教室や音楽教室の発表会の配信を対象にします。
2. 配信の3つの形 ― 生配信・見逃し配信・オンデマンド
演奏会の配信には、大きく3つの形があります。当日リアルタイムで届ける「生配信」、終演後しばらく見られる「見逃し配信」、編集して後日見てもらう「オンデマンド配信」です。目的に合わせて選びます。

生配信(リアルタイム)
生配信は、演奏会の進行に合わせてその場で届ける方法です。会場と同じ時間を共有できる、その場にいるような感覚が魅力です。
ただし、映像は実際の演奏より十数秒ほど遅れて届くのが普通です。設定によって、数十秒に延びることも、数秒まで縮めることもできます。会場の音とぴったりそろえて見るものではない、と覚えておきましょう。
見逃し配信(アーカイブ)
見逃し配信は、生配信の録画を、終演後しばらく見られるようにする方法です。当日見られなかった人や、もう一度見たい人に向いています。見られる期間は、数日から数か月まで自由に決められます。
オンデマンド配信
オンデマンド配信は、あとから編集した映像を、好きなときに見てもらう方法です。記録を整えて商品として残したいときに向いています。
見逃し配信の期間は、短くすると「今のうちに見よう」という気持ちを生み、長くすると見てもらえる機会が増えます。どちらにするかは、出演者や曲の権利者から、どこまで配信してよいと許可をもらえているかとあわせて決めます。
3. 無料で配信する?有料で配信する?
配信を無料にするか有料にするかで、使うしくみが変わります。まず自分の目的をはっきりさせると選びやすくなります。来られない家族や関係者に届けたいだけなら、無料のYouTube限定公開で十分です。チケットを売って収益にしたいなら、専用の配信サービスを使います。
無料で届けたい場合は、YouTubeの「限定公開」が手軽です。限定公開は、URL(リンク)を知っている人だけが見られ、検索には出てこない設定です。出演者の家族や関係者にリンクを伝えれば、かんたんに届けられます。
一方、チケットを売って有料で配信したい場合は注意が必要です。YouTubeでは、日本の一般の利用者が視聴チケットを売って配信するしくみは用意されていません。リンクを知る人だけが見られる限定公開のURLを売る行為は、規約で禁じられています。有料で配信するなら、チケットを販売できる専用の配信サービスを使います。
有料配信を考えるときは、お金の出入りも見ておきましょう。収入はチケット代に、見てくれる人数をかけた額です。ここから、配信サービスの手数料、配信にかかる費用、会場費、曲の著作権の使用料を引いた残りが手元に入ります。見てくれる人数が少ないと、これらを回収できないこともあります。確実に届けたいだけなら、無料で配信して寄付をお願いする方法もあります。
4. 配信サービスの選び方
配信に使うサービスは、無料で手軽なYouTube Liveと、チケットを売れる有料の配信サービスに大きく分かれます。配信の目的で選びます。

YouTube Liveは、無料で手軽に始められ、限定公開で関係者だけに届けられます。費用をかけずに記録を共有したいときに向いています。ただし、チケットを売ることはできません。
チケットを売りたいときは、ZAIKO・Streaming+(イープラス)・PIA LIVE STREAM(ぴあ)といった専用の配信サービスを使います。これらは、チケットの販売から視聴までを一つでまかなえます。
多くのサービスでは、売上に応じた手数料(おおむね数パーセントから1割程度)と、チケット1枚ごとの手数料がかかります。手数料はサービスや公演によって変わるため、申し込みのときに確認しましょう。海外への配信や見逃し配信に対応したサービスもあります。
選ぶときの軸は、「無料か有料か」「画質」「海外でも見られるか」「見る人がチケットを買いやすいか」の4つです。まずは無料か有料かを決めると、候補がしぼれます。
YouTubeで無料配信を始めるおおまかな流れ
無料のYouTube限定公開で配信する場合、おおまかな流れは次のとおりです。まず、Googleのアカウントで自分のチャンネルを作ります。次に、ライブ配信を使えるように設定します。初回は本人確認があり、使えるようになるまで少し時間がかかることがあるため、本番のずっと前に済ませておきましょう。あとは、カメラとパソコン(または対応するスマートフォン)を用意し、公開範囲を「限定公開」にして配信を始め、そのURLを見てほしい人に伝えます。
手軽に始められますが、演奏会では次に説明する「音」と「回線」でつまずきやすいため、準備が大切です。
5. 配信に必要なもの(機材・回線・音声)
ライブ配信には、カメラ・配信用の機材・インターネット回線、そして演奏会では特に大切な音声の準備が必要です。それぞれ順番に説明します。
映像を送るには、カメラと、その映像を配信サービスに送るための機材(パソコンや専用の機械)、配信用のソフトが必要です。無料のソフト(OBSなど)も使われます。
回線は、安定した「上り」の速さが大切です。上りとは、手元の映像をインターネットへ送り出す向きの速さのことです(アップロードとも呼びます)。動画を見るときに使う「下り」とは別の数字なので、注意してください。
目安として、上りの速度が10メガビット毎秒(Mbps。1秒間にどれだけのデータを送れるかを表す単位)以上あると安心です。無線より有線の方が安定します。配信中に速度が落ちると映像が止まってしまうため、当日と同じ場所で、事前に速度を測っておきましょう。
そして演奏会で何より大切なのが音声です。カメラ内蔵のマイクや客席の機械だけに頼ると、音がこもったり割れたりしがちです。専用のマイクで演奏の音をていねいに録って配信に乗せると、聴く人の満足度が大きく変わります。
演奏会では、配信の操作と高品質な録音を同時にこなすのは難しく、どちらかがおろそかになりがちです。音質をしっかり保ちたい場合は、収録・配信ともにプロへの依頼も検討してみてください。
6. 会場(ホール)で気をつけること
ホールでの配信には、会場ならではの注意点があります。客席にインターネット回線がない、携帯電話の電波が届きにくい、といったことが珍しくありません。配信がうまくいくかどうかは、当日より前の準備で決まります。
まず確認したいのが回線です。客席にWi-Fiが用意されていないホールは多く、携帯電話の電波を弱める装置が入っている会場もあります。会場の回線が使えるか、使えなければ自分たちで回線を用意できるかを、早めに確かめましょう。
そのほか、カメラから配信機材まで距離があると長いケーブルが必要になります。機材を置く場所の近くに電源があるかも確認しておきましょう。そして本番前には、必ず一度テスト配信をして、映像と音が問題なく届くかを確かめておきます。
7. 自分で配信する?プロに頼む?と費用の目安
配信は自分たちで行うこともできますが、安定した配信と良い音を求めるならプロに頼む方法もあります。どちらにするかは、求める仕上がりと手間のかけ方で決めます。
自分たちで行えば費用は抑えられますが、機材の用意や当日の操作、トラブルへの対応をすべて自分たちで担うことになります。演奏会では音質をきれいに保つのが難しく、配信操作と録音を同時にこなすのは負担が大きい点も頭に入れておきましょう。
パブットでは、配信用の機材、当日の人員、安定した回線の手配、演奏会で大切な音の収録、本番前のテストや配信中のトラブル対応をまとめてお任せいただけます。これらをひとつの窓口で依頼できるのが、収録専門チームに頼む利点です。
費用は、カメラの台数、配信する時間、見逃し配信を付けるかどうかで変わります。会場の使用料や曲の著作権の使用料は、これとは別にかかります。くわしい費用についてはパブットの自動見積もりでご確認ください。
なお、市販されている曲を演奏する場合、その演奏を配信するには、曲の著作権にかかわる手続きが必要になるのが一般的です。必要かどうかは発表前にJASRACの窓口でご確認ください。
配信の規模に応じた費用は、その場で見積もれます
8. パブットの配信サポート ―音にこだわる収録から
パブットは、演奏会・コンサートの収録を専門にしてきた制作会社です。撮影・録音とあわせて、ライブ配信のご相談にも応じています。
私たちが大切にしているのは、演奏会ならではの「音」です。映像と同時に、会場に合わせたマイクで演奏そのものをていねいに録り、その音を配信に乗せられるのが、収録を専門にしてきた強みです。「配信だけお願いしたい」「収録と配信の両方を頼みたい」「予算や規模に合わせて相談したい」など、ご希望に合わせてご相談ください。
よくある質問(FAQ)
演奏会の配信は無料と有料、どちらがいいですか?
来られない家族や関係者に届けるだけなら、YouTubeの限定公開を使った無料配信で十分です。リンクを知っている人だけが見られます。一方、チケットを売って収益にしたい場合は、有料配信に対応した専用サービスを使います。まず「お金を取るかどうか」で決めると、選びやすくなります。
YouTubeで有料のチケット配信はできますか?
YouTubeでは、日本の一般の利用者が視聴チケットを売って配信するしくみは用意されていません。無料で関係者に届けるには向いていますが、チケットを販売したい場合は、ZAIKO・Streaming+・PIA LIVE STREAMなどの専用サービスを使います。なお、限定公開のURLを販売することは規約違反になるため避けましょう。
配信に最低限必要なものは何ですか?
カメラ、映像を配信サービスに送る機材、配信用のソフト、そして安定したインターネット回線です。演奏会では、これに加えて演奏の音をきれいに録るためのマイクが重要になります。会場の回線が使えるかどうかは、事前に必ず確認しましょう。
会場のWi-Fiで配信できますか?
できる場合もありますが、おすすめはできません。客席にWi-Fiがないホールは多く、あっても多くの人が使うと不安定になりがちです。配信には安定した上りの回線が必要なため、有線の回線を用意するか、専用の回線を持ち込むのが安心です。本番前のテスト配信で必ず確かめてください。
見逃し配信は、いつまで見られるようにすべきですか?
決まりはなく、目的に合わせて決めます。期間を短く(数日〜2週間ほど)すると「今のうちに見よう」という気持ちを生み、長く(数か月)すると見てもらえる機会が増えます。ただし、出演者や曲の権利者から許可をもらえている範囲を超えないよう、事前に確認して決めることが大切です。
自分で配信するのと、プロに頼むのは何が違いますか?
大きな違いは、配信の安定性と音の質です。自分たちで行うと費用は抑えられますが、機材の準備や当日の操作、回線トラブルへの対応をすべて担う必要があります。プロに頼むと、機材・人員・事前テストまで任せられ、演奏会で大切な音もきれいに届けられます。やり直しのきかない演奏会では、こうした備えが安心につながります。
まとめ
演奏会のライブ配信は、いくつかの点を押さえれば難しくありません。まず、当日見せる「生配信」、終演後しばらく見せる「見逃し配信」、編集して残す「オンデマンド配信」のどれにするかを決めます。次に、無料で関係者に届けるか、チケットを売って有料で届けるかを決めると、使うサービスがしぼれます。
そのうえで、安定した上りの回線と機材を用意し、演奏会で大切な音もきれいに届ける準備をします。会場のWi-Fiは使えないことが多いため、回線の確認と本番前のテスト配信は欠かせません。
パブットは、収録を専門に、音にも力を入れた配信のご相談に応じています。
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