コンサートホールで3台のプロ用ビデオカメラが演奏会のステージを撮影している様子

演奏会のマルチカメラ撮影|カメラの台数で変わる映像と選び方

演奏会の撮影を頼むとき、「カメラは何台あればよいのか」「台数で何が変わるのか」がわかりにくい、と感じる方は多いと思います。結論から言うと、1台だけでは全体と演奏者のアップを同時に残せないため、映像が物足りなくなりがちです。2〜3台あれば、全体も演奏者の表情も残せます。何台にするかは、演奏会の編成とご予算、そして何をいちばん残したいかで決まります。

この記事では、カメラが1台増えるごとに映像がどう変わるかを説明し、動かさない「固定カメラ」と撮影者がつく「有人カメラ」の役割を整理します。そのうえで、編成や目的に合った台数の選び方と、台数は多ければ良いわけではないことをお伝えします。ここでの考え方は、ピアノなどの発表会やソロ・室内楽から、合唱・吹奏楽・オーケストラのような大編成まで、どの演奏会にも当てはまります。読み終えるころには、見積もりを取る前に何を決めておけばよいかがはっきりします。写真と動画のどちらを残すかで迷っている方は、写真とビデオどちらを選ぶ?|演奏会・発表会の撮影で後悔しない選び方もあわせてご覧ください。

パブットは、演奏会やコンサートの収録を専門に手がけてきた制作会社です。現場でカメラの台数と配置を組んできた経験をもとに、撮影を頼む前に知っておくと安心なことを、この記事にまとめました。

この記事の要点

  • 複数台のカメラ(マルチカメラ)で同時に撮ると、撮り直しのできない本番でも、全体と演奏者の表情の両方を残せます。あとからいちばん良い映像を選んでつなぐので、見ていて飽きません。
  • カメラ1台では、全体と演奏者のアップを同時には残せません。2台で「全体+アップ」、3台で「全体+アップ+指揮者」か「全体+2方向のアップ」というように、1台増えるごとに残せる場面が増えます。
  • カメラは2種類に分けて使います。動かさずに全体を映し続ける固定カメラ(撮影の安全網)と、撮影者がついて演奏者の表情や手元に寄る有人カメラです。
  • 台数が増えると料金が上がる主な理由は、カメラ代よりも、撮影する人の数です。台数は多ければ良いわけではないので、編成とご予算に合った台数を選ぶと後悔しにくくなります。

1. 演奏会のマルチカメラ撮影とは

「マルチカメラ」は、「複数台のカメラ」という意味です。演奏会のマルチカメラ撮影では、複数台のカメラで同じ演奏を別々の向きから同時に撮り、あとからいちばん良い映像を選んでつなぎます。

なぜ演奏会では、複数台のカメラを使うのでしょうか。演奏会は撮り直しのできない一度きりの本番で、しかも1台のカメラが一度に映せる向きは、1つだけだからです。全体を映していれば演奏者の表情は小さくなり、誰か一人に寄れば全体が見えなくなります。

カメラが複数台あれば、全体を映しながら、同時に演奏者のアップも撮れます。一度きりの本番で両方を残せるので、見ごたえのある映像に仕上がります。この点が、マルチカメラ撮影のいちばんの値打ちです。

2. なぜカメラ1台では足りないのか

カメラが1台だけでは、演奏会の映像として物足りなくなりがちです。1台で同時にできることには限りがあり、おもな限界は次の4つです。

  • 全体を映している間は、演奏者のアップ(顔や手元)を撮れません。全体を画面に入れると、一人ひとりは小さくしか映らないためです。
  • 編集で場面を切り替えられません。映像が1本しかないので、同じ向き・同じ大きさの映像が続き、見ていて単調になります。
  • 指揮者のいる演奏会では、指揮者の表情が映りません。全体を映すカメラには、指揮者の後ろ姿が小さく入る程度です。
  • 1台で無理に演奏者に寄ろうとして、本番中にカメラを大きく動かすと、画面が揺れやすくなります。

1台で撮っても、「記録として残す」ことはできます。ただ、あとから何度も見返したい「作品」として残すには、物足りなさが出やすくなります。

3. カメラが1台増えると、映像はこう変わる

カメラの台数が増えるごとに撮れるものが積み上がる階段図

カメラを1台増やすごとに、映像に残せる場面は増えていきますが、増え方は3台までと4台からで違います。2台と3台では、1台では映らなかった演奏者のアップや指揮者が、新しく映るようになります。4台と5台では、指揮者を残したまま、アップを撮る角度が2つ、3つと増えます。角度が増えるほど場面の切り替えが豊かになり、撮り逃しも減ります。

2台でできること

2台では、全体を映し続けるカメラに、演奏者に寄るカメラが1台加わります。全体の映像と、演奏者の顔や手元を大きく映した映像がそろうので、編集で2つを切り替えられます。台数による違いがいちばん大きいのは、1台から2台に増やしたときです。ソロや少人数の演奏会でも、手元のアップが入るだけで映像の印象が大きく変わります。

3台でできること

3台には、組み方が2通りあります。1つ目は、2台に指揮者専用のカメラを足す組み方で、指揮者の表情や指揮ぶりまで残せます。

2つ目は、演奏者に寄るカメラを2台にする組み方です。上手(かみて/客席から見て右)と下手(しもて/客席から見て左)の2つの角度から、演奏者のアップを撮れます。同じ場面を2つの向きから映せるので、映像に厚みが出ます。どちらにするかは、指揮者を残したいのか、演奏者のアップを2つの角度から撮りたいのかで決めます。

4台・5台でできること

4台では、3台の2つの組み方を合わせて、全体と指揮者に加え、上手と下手からの2方向のアップも残せます。3台のときと違って、指揮者と2方向のアップのどちらかを選ばなくて済みます。5台では、さらに中央の高い位置(2階席など)に、撮影者がつくカメラを1台加えます。演奏者のアップを上手・下手・中央の3つの方向から撮れるので、表情をさまざまな角度から残せます。

4. カメラの役割分担 ―「固定カメラ」と「有人カメラ」

2階席のあるホールで5台で撮るときのカメラの置き方の例。2階席の最前列の両端と中央に撮影者が座る有人カメラ、中央に全体を映す固定カメラ、舞台の側に指揮者専用の固定カメラ

演奏会の撮影では、カメラを2種類に分けて使います。動かさずに全体や指揮者を映し続ける「固定カメラ」と、撮影者がついて演奏者に寄る「有人カメラ」です。この2つを組み合わせると、全体と表情の両方を安定して残せます。2階席のあるホールでは、全体を映す固定カメラも有人カメラも2階の客席の最前列に置き、撮影者は客席に座って撮ります。指揮者専用のカメラだけは、舞台の側に置きます。

固定カメラ=全体の記録と「安全網」

固定カメラは、三脚に据えたまま、向きも構図も変えずに映し続けるカメラです。カメラを動かさないため、撮り逃しがありません。なかでも全体を映す固定カメラは、有人カメラが誰かに寄っている間も、いつでも使える全体の映像を残しているので、撮影の「安全網」になります。固定カメラは人が動かす必要がないので、撮影者はつきません。その分の人手を、演奏者の表情を撮る有人カメラに回せます。

有人カメラ=表情・手元に寄る

有人カメラは、撮影者がついて、演奏者の顔や手元を大きく映すカメラです。どの演奏者に、いつ寄るかはその場で決める必要があるので、人がつきます。有人カメラが2台のとき、パブットでは2台とも演奏者のアップを撮ります。全体は固定カメラが映しているので、有人カメラは上手側と下手側の違う角度から、同時にアップを狙えます。

有人カメラには、演奏会の撮影に慣れた撮影者がつきます。ただ、撮影者が曲をすべて知っているわけではないので、その場の判断だけでは、ソロの始まりに遅れたり、ソロを撮り逃したりすることがあります。曲の中のソロやパートの動きに合わせて撮りたいときは、楽譜を見ながら撮影者に指示を出す担当(スコアラー)が必要です。

パブットでは、スコアディレクターという別料金のオプションで、この担当を付けられます。このオプションでは、本番の前に楽譜から撮影用の台本を作り、当日はスコアラーが1名ついて、楽譜を追いながら撮影者に指示を出します。選べるのは撮影者が2人以上つくプラン(6章の表のスタンダード・プロ・プレミアム)で、発表会のプランでは選べません。吹奏楽での使い方は、吹奏楽の定期演奏会の撮影 ― 部員一人ひとりを残す収録のコツで説明しています。

指揮者専用カメラの意味

指揮者は客席に背を向けて立つので、全体を映すカメラからは、指揮ぶりや表情が見えません。指揮者の表情まで残すには、舞台の側から指揮者の正面を狙う専用のカメラを1台置きます。このカメラも動かさない固定カメラなので、撮影者はつきません。オーケストラや吹奏楽、合唱のように指揮者の存在が大きい演奏会では、このカメラを入れる値打ちが大きくなります。オーケストラの撮り方は、オーケストラ・管弦楽の演奏会撮影 ― カメラ台数の考え方と収録の勘所で説明しています。

5. 台数とスタッフの人数・費用の関係

台数が増えると、料金も上がります。その主な理由は、カメラ本体の値段よりも、撮影する人の数にあります。また、台数が増えるほど、撮影のあとで映像を選んでつなぐ編集の手間も増えます。この仕組みを知っておくと、見積もりの見方が変わります。

固定カメラは置いたままでよいので、撮影者はつきません。一方、有人カメラには、1台に撮影者が1人つきます。そのため、同じ「カメラ3台」でも、撮影者が1人のことも、2人のこともあります。

たとえば、固定カメラ2台と有人カメラ1台の3台なら、撮影者は1人です。固定カメラ1台と有人カメラ2台の3台なら、撮影者は2人になります。台数が同じでも、撮影者の人数、つまりアップを撮る角度の数によって、映像の厚みと費用が変わります。見積もりでは、カメラの台数だけでなく撮影者の人数も確かめると、仕上がりの違いが見えてきます。

カメラの台数や撮影者の人数を含めて、見積書で確かめておきたい項目は、演奏会撮影の料金・相場と見積書の読み方 ― 相場と見積書を見比べるコツにまとめています。

6. 演奏会の編成・目的で選ぶ ― 何台が向いている?

必要な台数は、演奏会の編成(人数や楽器の構成)と、何をいちばん残したいかで決まります。編成ごとに、向いている台数と組み方をまとめます。

パブットでは、こうした考え方をもとに、撮影プランを5つの段階に分けて用意しています。下の表は、各プランのカメラ台数と撮影者の人数、主なカメラ構成をまとめたものです。

プラン カメラ台数 撮影者 主なカメラ構成
シンプル 2台 1名 全体+演奏者のアップ
ベーシック 3台 1名 全体+アップ+指揮者専用カメラ
スタンダード 3台 2名 全体+上手・下手の2方向アップ
プロ 4台 2名 全体+2方向アップ+指揮者専用カメラ
プレミアム 5台 3名 全体+上手・下手・中央(高所)の3方向+指揮者専用カメラ

ソロ・室内楽では、指揮者専用カメラの代わりに、ピアノの手元など別の角度を映す固定カメラを置くこともできます。選べるプランは演奏会の編成によって異なり、たとえば発表会は2つのプランからお選びいただけます。料金の目安は、編成や台数によって、おおよそ十数万円台から数十万円台です。くわしい料金は、編成別のページや自動見積もりでご確認ください。

台数の目安が決まったら、そのまま無料見積もりへ

7. 台数は多いほど良いわけではない ― 後悔しない選び方

カメラは、多いほど良いとは限りません。台数を増やせば費用も上がるので、演奏会に合った数を選ぶことが大切です。選ぶときの目安は、次のとおりです。

  • 小規模な演奏会や少人数の編成なら、2〜3台で十分なことが多いです。それより台数を増やしても、活かしきれない場合があります。
  • 費用は、カメラの台数と撮影者の人数に応じて上がります。残したい場面に対して、多すぎず少なすぎない台数を選びましょう。
  • 反対に、1台だけにすると後悔しやすくなります。「ソロのアップが無かった」「指揮者が映っていなかった」と気づいても、本番が終わってからでは取り返せません。
  • 迷ったときは、いちばん残したい場面は何かを基準にします。手元を残したいならアップを撮るカメラを、指揮者を残したいなら指揮者カメラを優先します。

パブットでは、必要以上の台数をお勧めすることはありません。演奏会の規模とご予算をうかがったうえで、いちばん残したい場面に合った台数をご提案します。

台数のほかに、業者を比べるときの見方は、失敗しない演奏会撮影の業者選び|後悔しない5つの視点にまとめています。

8. パブットのマルチカメラ収録 ―収録専門の現場から

演奏会の収録を専門にしてきたパブットでは、クラシックの演奏会を知る撮影スタッフが、編成に合わせてカメラの台数と配置を組み立てます。

映像に入る音は、ふだんは会場に備え付けの吊りマイクから録ります。ご希望があれば、高音質録音のオプション(別料金)で、撮影者とは別に録音の担当者がつき、専用の録音機材で演奏を録ることもできます。映像も音も、一つの窓口にまとめてお任せいただけます。録音の考え方は、演奏会の録音方法とは?プロのマイクの置き方とハイレゾ仕上げの裏側でくわしく説明しています。

「何台で頼めばいいかわからない」「指揮者の表情を残したい」「予算のなかでいちばん良い形にしたい」といったご相談にも、現場での経験をもとにお答えします。

よくある質問(FAQ)

演奏会の撮影は、ふつう何台のカメラで撮りますか?

3台前後が一つの目安です。3台あれば、全体と演奏者のアップに加えて、指揮者か、別の角度からのアップのどちらかを撮れます。小規模な演奏会では2台に、大編成の公演ではアップの角度を増やして4〜5台にすることもあります。最終的には、演奏会の編成と、何を残したいかで決まります。

カメラ1台だけでも頼めますか?

パブットでは、カメラ1台だけの撮影はお受けしていません。いちばん少ないシンプルプランでも、全体を映すカメラと演奏者に寄るカメラの2台で撮ります。1台だけでは、全体と演奏者のアップを同時には残せず、指揮者の表情や場面の切り替えも残りません。

指揮者は撮ってもらえますか?

指揮者専用のカメラを足せば、指揮者の表情や指揮ぶりを残せます。指揮者は客席に背を向けて立つので、全体を映すカメラには後ろ姿が小さく映る程度です。指揮者を残したい場合は、見積もりのときにお伝えください。

「カメラ3台」なのに、撮影者が1人や2人と違うのはなぜですか?

固定カメラは動かさないので撮影者がつかず、有人カメラは1台に撮影者が1人つくためです。同じ3台でも、撮影者が2人いれば演奏者のアップを2つの角度から撮れて、映像に厚みが出ます。

カメラの台数は、多いほど良いのですか?

いいえ。小規模な演奏会なら2〜3台で十分なことが多く、それより台数を増やしても活かしきれない場合があります。台数や撮影者の人数が増えるほど費用も上がるので、残したい場面に合わせて、多すぎず少なすぎない台数を選んでください。

ピアノの発表会でも、複数台で撮れますか?

撮れます。全体と演奏者のアップを分けて撮ると、出演者一人ひとりが演奏する姿をしっかり残せます。発表会向けのプランもご用意しています。

まとめ

演奏会のマルチカメラ撮影では、複数台のカメラで同時に撮り、あとからいちばん良い映像を選んでつなぎます。1台では全体と演奏者のアップを同時には残せませんが、2台で全体とアップを、3台で指揮者か2方向のアップまでを残せます。

カメラの役割は2つです。動かさない固定カメラが全体を映し続け、撮影者がつく有人カメラが演奏者の表情や手元に寄ります。曲の中のソロに合わせて撮りたいときは、楽譜を見て撮影者に指示を出す担当を、スコアディレクター(別料金のオプション)で付けられます。付けられるのは、撮影者が2人以上つくプラン(発表会のプランを除く)です。

台数を増やすと料金も上がり、撮影者が増えるときには特に大きく上がります。同じ3台でも、撮影者が2人いれば、演奏者のアップを2つの角度から撮れます。

カメラは、多ければ良いわけではありません。後悔しないためには、演奏会の編成とご予算、そしていちばん残したい場面をもとに台数を選ぶことが大切です。パブットは演奏会の収録を専門にしており、録音まで一つの窓口でお引き受けしています。

見積もりは無料です。いくつかの質問に答えるだけで、その場で概算がわかります

♪

この記事の監修

株式会社パブット 収録チーム

演奏会の撮影・録音の専門会社。年間200件以上の収録を手がけ、これまでに200以上のホール・サロンで演奏を記録してきました。私たちについて

上部へスクロール
Fix Banner Sample
簡単自動見積 お問合わせ